米国・・民間任せ
「私の家族にとって、医療費や医療保険料の支払いは
生活を脅かす最大のリスク」。
マセチューセッツ州で大学の非常勤講師を勤めるマーク・
フリードマンさん(54)は医療費に翻弄された生活を
振り返る。
第1幕は06年の妻の出産で始まった。通常は帝王切開
しても7千ドル(約63万円)程度だが、感染予防のため、
2週間の入院。病院から10万5千ドル(945万円)請求
された。
ところが当時職場で加入していた医療保険の上限は、
5万ドルまで。残り5万5千ドル(495万円)は自己負担。
「自己破産」を考えたが、医療費に特化した負債軽減を
支援するNPOに支援を求め、最悪の事態は免れた。
第2幕は保険料の支払いだ。マセチューセッツ州は06年
低中所得者層(3人家族で年約5万3千ドル(約525
万円))向けの公営保険を創設。公費助成で保険料を
低く抑え、支払い上限なく幅広い治療を保障。
フリードマンさん一家も月300ドル、年3千600ドル
(月2万7千円、年32万4千円)の負担で、加入を
認められた。
ところが、昨年夏、担当する講義が増えて所得があがり、
基準を僅かに上回った。同じ給付内容の民間保険の
保険料は年間1万8千ドル(162万円)。貯金を使い
果たさないと払えない。
子供は公的制度の対象。夫婦はしばらく無保険で我慢
すると決めた。
米国では無保険者は4千500万人(6人に1人)。
米国は企業社会であるので、GMやFORDでは会社が
医療保険や退職年金を運用しており(団体保険)、中小の
企業もこれらの方式をとっている。規模の小さい企業の
従業員ほど無保険者が多い。会社単位で民間保険会社
と契約する際、大企業に比べて交渉力の弱い中小企業の
保険料は高く、保障のの範囲も狭くなりがちだ。
個人加入だとさらに高く、病弱だと加入できないこともある。
しかし保険料を従業員からどの程度とっているのか、
会社は何割負担しているのか、医療費の上限支払い制限
がどうなっているのか、など自分には皆目判っていない。
先ごろGMが運用負担に耐えられず、全米自動車労組
UAWに譲渡、売却したとの報道があったと思うが、譲渡
条件や自動車労組がどのように運営するのか全く
判らない。
GM,クライスラーでは政府に再建策を出さねばならぬが、
保険、年金問題も避けて通れず、実態が徐徐に明らかに
なろう。
子供については各州で何か公的制度があるらしいが良く
わからない。公的保険の対象は、高齢者(メデイケア)と
低所得者層(メデイケイド)に限られるが条件、内容等
さっぱり判らない。
日本・・・皆保険
日本では差額ベッドなどを除き、必要な医療は公的保険で
カバーされる。 今後高齢化による医療費が経済や財政を
圧迫しているとの議論がある。
ただ米国人が感じている不安をみると、日本のように
必要な医療は国民全体で公的にカバーする安心感は捨て
がたいことが分る。
日本ではお産でも,なんらの異常で医師が治療が必要と
判断すれば、通常の保険診療が受けられる。かかった
医療費の3割は自分で出すが、「高額療養費制度」によって
自己負担額が限度を超えると払い戻される仕組みが、どの
保険制度にもある。(自分の場合支払い医療費が
月44,400円を越える場合は超える部分が高齢者医療
保険から払い戻される。又自分に対する後期高齢者医療
保険料年額決定、08年7月14日付けで303,090円と
通知してきた。それまでの老人医療保険料は年間
284,300円であったから、2万円の増額となった。又
窓口支払いは1割から3割になった。)
フリードマンさんの945万円の医療費も自己負担は17万円
強で済む計算だ。一方米国では自己責任で民間保険を選び、
保険料が安いと支払われる医療費の上限が低くなる。
安心感の違いは大きい。
保険料も、民間保険は病気のリスクと治療やサービスの
範囲で決まり、公的保険のように収入の多い人ほど高い
保険料を払い、低所得者向けには低く抑える「所得再分配」
の仕組みはない。
日本では中小企業の従業員向けに「協会健保」(旧政府管掌
健保)、個人事業主や非正規社員には国民健保があり、国や
自治体の補助金で保険料が抑えられている。
ただ国保の保険料を滞納して無保険状態の世帯は約33万
1千世帯(加入世帯の1.6%)ある。この場合医療費は全額
個人負担になる。保険料を払えば元に戻るので皆保険には
変わりない。
日米を比較した共著書「日本の医療」中公新書、96年8月
初版、07年3月14版、J.C.キャンベル・池上直己著があるが、
日本の医療を褒めるとともに、米国医療を比較している。
日本ではすべての国民が公的保険に強制的に入る「皆保険」
が確立。政府が独占的な買い手として1元的に価格、つまり
診療報酬を決めている。このシステムが国民に平等な医療を
保障してきた。
日本も救急患者のたらい回しや、地方病院の閉鎖など様々な
問題がある。ただ、そのために制度設計を根本から変える
必要はない。
日本の医療費はGDP比8%、先進国中最低だ。まずこれを
もう少し増やす。加えて医師の配置を調整すれば、かなりの
問題を解決できるだろう。
一方医療費がGDPの15%を超える米国は、先進医療では
優れているが、各医療機関と保険会社がそれぞれ価格を
交渉し、制御しようがない。
医療費を抑制するために患者の受診できる医療機関が
保険者によって限定されており、医師は患者を入院させる
前に、保険者から許可をえなければならないなど様々な
制約が設けられている。
皆保険を機能させ、費用を抑制するには、民間会社を主体
とした現行制度を根本から作り変える必要があり、難事業だ。
こうした状況は日本とまさに対照的であり、医療について
日本では、たとえ場当たり的な印象を与えても「バランス」を
重視する日本の政策決定プロセスのほうが優れていたと
いえよう。
日本の医療制度にも早急に改善しなければならない多くの
問題点が存在することも事実だが、制度の骨格部分に
ついては、米国に対して基本的に教示する立場にあり、
こうした問題意識に立って本書の執筆に当ったという。
事実本書の英文版、ケンブリッジ版の題は、「The art of
Balance in Health Policy: Maintaining Japann's Low-Cost,
Egalitarian System」(医療政策におけるバランスの技ーー
低医療費で平等な日本の医療体制の維持)とした。
かって、ヒラリーが大統領付けとして、国民皆保険に
乗り出したが製薬業界、医療業界から反対に遇い、更に
民主党からも反対をうけ、断念、挫折したことがある。
先進国で皆保険でないのはアメリカだけ。
オバマ氏の戦略を注目している。
就任演説では「歴代政権は医療保険改革を試みてきたが
不発に終ってきた。仕組みが複雑な上、医師や製薬会社、
労働組合、保険会社などの利害が対立してきたからだ。
健康保険はコストがかかり過ぎ・医療・福祉の質の向上と
コスト抑えるために素晴らしい技術を駆使する。
手が届く保険に加入できるよう政府が支援する。」と。
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