世界に存在する言語数は7千にも及ぶ。単純に計算すると、一つの
国で何と30以上もの言語が使われていることになる。その中から
46の主な言語が取り上げらている。
成り立ち、使われている地域、話者数、独自の民族文化を徹底ガイド。
言葉を使うとは、単に他者に意味を伝達するだけではない、社会的な
アイデンテイテイーを表すことでもある。言葉の奥深さ、多様さ、
面白さ、社会情勢にかかわる背景などが紹介される。
英語は世界帝国を築いたイギリスと文化的・経済的に現代世界に
大きな影響力をもつアメリカの言語であったという、偶然的な理由で
世界の共通語として現在使われているに過ぎない。伝達力の点では
すべての言語は同等なのであって、英語が言語として優れている
などということは、決してない。
英語という言語は、どちらかと言えば、世界の諸言語の中でも、
珍しい特徴をそなえた、いわば「異端」の言語である。
英語に比べれば、私たちの日本語のほうが、全体としては
「まっとうな」性格をもった言語といえる。
英語と同じように世界に通ずる共通語として、機能する資格は
十分にある。しかし、政治、経済、文化のどの面をとっても、日本の
影響力はアメリカに及ばない。これが主たる理由となって世界語に
なることができない。
各言語の面白い事実を取り上げて書いてみる。
●イタリア語 フイレンツエ方言が標準語に
イタリア語はローマで使われていたラテン語の末裔である。現代
イタリア語の標準語はローマ方言ではなく、トスカーナ地方の
フイレンツエ方言がもとになっている。
ローマには教王庁はあっても、実質的支配をイタリア全土に及ぼして
いたわけではないから、ローマの方言が各地に浸透することは
なかった。
13世紀になると、この国でいち早くルネサンスの活動が始まる。
その中心地はローマではなく、メデイチ家の支配するフイレンツエで
あった。
この都市に属するトスカーナ地方の方言で書かれたのが、ダンテの
「神曲」であり、ボッカチオの「デカメロン」であった。これ以降、イタリア
文化に対するフイレンツエの優位は決定的となり、書き言葉としては
標準語としての地位を獲得した。
しかし話言葉のレベルで全土に標準語が普及するには、19世紀
後半に国家の統一が実現してから。
●ポルトガル語
種子島に鉄砲を伝えたのはポルトガル人だったし、イエズス会宣教師
ザビエルは本人はスペイン人だったが、ポルトガル国王に派遣され
来日した。
ブラジルのポルトガル語と本国のポルトガルの間には、発音や語彙の
面で、若干の差異があるだけで、殆ど同じと言ってよい。
ポルトガル語にはスペイン語にない特徴もある。鼻にも空気を通して
発音される「鼻母音」と呼ばれる音が目立つ。
同じような音は」フランス語でも使われている。ポルトガル語の鼻母音
はフランス語より種類が多い。
文法の面では、不定詞に語尾をつけて、不定詞の主語を表す特徴が
ある。これは他のロマンス諸語に見られない独特の方法だ。
ブラジル在住の日系人は約140万人、日本に居住する日系ブラジル
人は31万人。今年は日本移民100周年にあたり、皇太子が各種
記念祭に出席する。ブラジレーロになった日本人の記事が新聞に
沢山でており、興味深く読む。
ポルトガル語を公用語とする国々
モザンビーク、アンゴラ、サントメ・プリンシペ・ギニアビサウ、
カーポベルデ
●スペイン語 3億5千万人の存在感
スペインのあるイベリア半島は、紀元前3世紀にはすでにローマによる
殖民が始まっていたので、本家のイタリア語はともかく、後になって
ローマに併合されたガリアのフランス語やダキヤのルーマニア語よりは
ラテン語に近い特徴を保持している。
スペイン語の文法は、主語の人称や時制によって比較的複雑な活用
をするほか、名詞に性の区別がある。
発音はそれほど難しくない。母音は日本語と同じ五つだし、子音の数
は日本語より多いものの発音の難しいものはない。ただ一つだけ
「巻き舌」で発音されるラ行音がある。
英語とフランス語には「b」と「v」の区別があるが、スペイン語は日本語
と同じくこの両者を区別しない。
本国ではスペイン語でメヒコ、アルヘンテイーナ、チーレと呼ばれる国
の英語読み、メキシコ、アルゼンチン、チリの呼称は無くなるかも
知れない。
●フランス語
今やアングロ・サクソン民族の旗手となったアメリカへの敵愾心は、
情報技術の時代になって、インターネットを通じて、英語が急速に流入
するに及び、一層強まっているのかもしれない。
ただし言語的に見ると、英語と仏語は共通の祖先に由来する言語であり、
こうした反感は近親憎悪のようなものだ。
英語の祖先は「ゲルマン祖語」と呼ばれ、北ヨーロッパに居住していた
民族が使用していたものと考えられている。仏語の祖先であるラテン語
は、ともに「インド・ヨーロッパ祖語」と呼ばれる共通の祖先に遡ることが
知られている。
ロマンス諸語のロマンスとは、中世ヨーロッパの書き言葉だったラテン語
に対し、民衆が話していた言語を総称するための名前だった。
6世紀には、ラテン語とも他のロマンス諸語とも異なった特徴を持つ、
言語として、仏語が成立していたと考えられる。
中世の仏語は主に北フランスで使われており、パリの王権も弱体だった
ので、あまり勢力のある言語と言えなかった。 しかし、ノルマンデイで
フランス語の方言を使っていた集団が、1066年にイギリスを征服した
ことにより、イギリスの支配階級の言語はフランス語となった。
この結果英語には大量のフランス語からの借用語が入り込む。
フランス語は18世紀から19世紀にかけて、洗練された文化を背景に
国際語としてヨーロッパに君臨した。
北米のカナダではケベック州の住民役7百万人の大多数がフランス語
話者であり、分離独立への欲求を根強く持っている。
現在では国際語としての有用性では、圧倒的に英語に遅れをとっている。
フランス国内ではフランス語だけが使われているのかというと、実は
そうではない。
中世では、同じロマンス諸語に属するオック語(Oc、プロバンス語)が
南フランス全域で使われていた。
アルサス・ロレーヌ地方ではドイツ語の方言を使う人が多い。ブルターニュ
地方ではプルトン語、スペインとの国境地域ではカタルーニヤ語、
ベルギーとの国境地域ではフラマン語(オランダ語)の使用者が存在
する。スペインにまたがるバスク地方では、バスク語の勢力も強い。
●ルーマニア語
紀元2世紀の初頭にローマ皇帝トラヤヌスが征服する以前、この地域は
ダキヤと呼ばれており、ローマ人以外の民族が居住していた。
ローマによる征服以後は急速にローマ化し、言語もラテン語に取って
代られた。
3世紀にはゴート人がこの地域に侵入を始めたから、ローマのダキア
支配は高々200年ほどだった。これ以後、ダキヤの地はゲルマン人
そしてスラブ人に支配されたのだが、この地でローマの言語が使われ
続けた。
異民族の支配の下でも、千年以上もの間ローマの文化と言語を保持
しようとしてきたのは、まさに驚くべきことである。
もちろんスラブ人による支配が長かったから、混血が進んだはずだ。
しかし言語的にはスラブ語を受け入れるのではなく、逆に吸収し、
自分が生き残ることで、古代のラテン語からルーマニア語へと変化を
遂げたのである。
ラテン語には、名詞に男性・女性・中性の三つの性があったが、他の
ロマンス諸語では、男性と女性の二つに単純化された。
しかしルーマニア語では依然として三つの性が残っている。
名詞の文法的な働きに応じた活用形が、ラテン語では六つあったの
だが、ロマンス諸語では一般にすべて失われている。ルーマニア語
では二つに減っているものの活用形の区別は何とか保持されている。
スラブ語からの借用語が多い。「はい」はロシヤ語と同じdaである。
★言語世界地図を続けて書くと、長くなるし、書くほうも疲れるので、
シリーズとして書いて行くことにする。
言語というジャンルが設定されているので、そこをクリックすれば
纏めて見れる。
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