5月20日刊、光文社新書、副題は衝撃のビジネスモデル。
深い洞察に満ちた本であり、自分で傍線をひいたところを抜書きする。
iPodはいい製品だろうか。
iPodには必要最小限の機能しかついていない。無駄を極限まで削ぎ
落とした外観と操作系は、音楽を聴くという体験にユーザーを集中させる。
アップルは常識をシフトして、新しい価値を提供することに優れた企業
である。アップルの成功の歴史は、常に新しい価値の発見とともにあると
いっていい。
初めて、アイコン+マウス型のGUIを普及させたマッキントッシュ、音楽
プレイヤーをコンテンツ・ビジネスとファッションにむすびつけたiPod.
何れも既存の市場で闘うのではなく、少し視点を変えたところで価値を
創造する。
2007年1月9日、スチーブ・ジョブスはiPhoneを発表した。キャッチフレーズ
は電話を再発明するだ。しかし彼が本当に再発明したのは収益構造で
あっただろう。 Web2.0が喧伝されてかなり時間が経つ。グーグルの
影響力は変わらず増大しているし、アマゾンも市場への浸透を拡大して
いる。グーグルの収益構造は基本的に広告から離れられない。
ジョブスはiPhoneによってキャッシュを得ようとしている。どういう方法で。
携帯電話の居場所を電話機からオーグメント(人間の知的能力を増幅
Augmentする機器)にシフトさせることによってである。
ネット上では音楽ファイルなどのコンテンツの流通は活発であるものの、
違法性を伴いがちなP2Pでの話しであったり、違法を追求するあまり、
きわめて制限された形でしか利用できなかった。
この状況を根底から変えてみせたのが、iTnuesである。
iTunesとはアップルが開発したエンターテインメント・ソフトである。楽曲
管理と楽曲購入、周辺機器としてのiPodの管理を行う。
サイトで入手した楽曲を、携帯音楽プレーヤーで聴くための、転送処理は
利用者の利便性をまったく無視したものだった。
アップルはこれらを違和感なく、一貫性を持って統合してみせた。ソフトを
提供するだけでなく、iTunesストアという楽曲販売サービスも自前で展開
した。
特に重要なのは、iTunesがコンテンツに値をつけたことだ。無料が当然視
されている環境、ほとんど障壁なく違法コピーが行える環境においても、
利用者は適切な価格と操作性さえ与えられれば、対価を支払うことが
実証されたのである。
高度な情報処理を行う場合ユーザーインタフエースの果たす役割は極めて
大きい。一昔前のスパーコンピュータ並みの機能が、ポケットにいれられる
サイズまでダウンサイズされた今、誰もが潜在的に大きな情報処理能力を
持っている。現状ではこのインターフエースが機器ごとに異なる。
PCのパスワードだけでうんざりしているのに、マニュアル地獄やパスワード
地獄が家電にまで波及したら、日常生活は油断のならないもになる。
ユーザーインターフエイスの研究はポインテイングデバイス(マウス、タッチ
パネル、ペンタブレット、ジョイステイック等)以降、飛躍的な進歩を遂げ
られずにいる。近年動作検出型のインターフエースに新潮流が散見される
が(任天堂のWiiなど)、新たな知見はあるものの、扱える情報量がマウス
に比較して小さい。
情報機器のインターフエースはまだまだ未熟なのだ。ペーパーレスなど
まったく実現していない。
そこで現実的な解決策として浮上してくるのが、インターフエースの集約
である。集約情報機器とは、リモコンのようなもでなく、あらゆるサービス
を連携させることで、人間の知的能力を増幅(Augment)する機械のことだ。
本書では集約情報機器とその概念をフエデレート(Federate)端末と呼ぶ。
マイクロソフトハ、当然PCがフエデレート端末の地位を占めると考えていた。
ただデスクトップPCは持ち運びができないため、「どこでも」の部分に問題
がある。そこでノートPCやPDAの普及に努力してきた。
ノートPCからネットにアクセスする場合、主要な末端回線として無線LANを
使うが、公共の場で使える無線LANアクセス・ポイントはネットワーク
先進国でさえそう多くない。
ここで圧倒的なアドバンテージをもつのが携帯電話である。ユビキタスの
描く、いつでも、どこでも、だれにでも、に最も近いデバイスであるといえる。
当初,PC陣営はネットワーク端末としての携帯電話を軽視していた。PCと
比較した場合、その貧弱な処理能力、表現能力、通信速度は対等な
ライバルトは考えなかった。しかし多くのユーザーは手軽で携帯性に富む
携帯電話をネットへのアクセス手段として選択した。成熟した環境では、
リッチさ(高機能、多機能、高表現力)が、デバイスを選択する場合の
クリテイカルな要因ではないことがよく判る。
ネットのコンテンツは、勿論フルスペックPCのほうがよりリッチな楽しみ方
ができるが、多くのユーザーはリッチさより携行性を選択したといえる。
そこそこのレベルのコンテンツを手軽に楽しむことのほうに、より価値を
見出しているのである。
携帯電話の商品カテゴリーは家電である。家電では利用者に負担を
かける利用方法は考えられない。携帯電話は高度な情報処理機器であり
ながら、誰でも使える点で、フエデレート端末としての的確性を非常に高く
備えている。
数年後に情報を制御するための中心デバイスとして、携帯電話が主役の
座を掴み取っていてもなんの不思議もない。アップルのiPhoneは、まさに
こうしたバックグラウンドのおいて成立する戦略製品なのである。
もっともよくコンピュータと対話できるのは、いまだに数十年前のデバイス
であるキーボードである。携帯電話はその持ち運びの特性上、フル
キーボードを装備することはほぼ不可能である。指にある程度の太さが
ある以上キーのサイズは一定以下ではあり得ず、だからこそテンキーを
装備することが標準となる。
しかし携帯電話がネット端末としての性格を強め、電話が複数ある
サービスの一つにすぎなくなる状況では、このインターフェースは
明らかに不適切である。
iPhoneは単に携帯電話とiPodを加算しただけの製品ではない。iPhone
の基礎仕様はマルチタッチ式の全面タッチパネルを採用している。
通常のタッチパネルでは一つの操作しか受け付けず、二本の指で異なる
箇所に触れたらエラーになってしまう。マルチタッチであれば、複数の指
を使って複雑な操作を行うことができる。
この仕様により、携帯電話は大画面と柔軟なインターフエースの両方を
手にいれることになる。
これはユーザーにとってデイスプレイであり、インターフェイスでもある。
限られた空間を二重の意味で満たすことによって、価値を乗じたのである。
任天堂のDSは携帯端末を持ち歩く生活様式を児童にまで広めた。しかし
フェデレート端末の座を巡る争いには、手が届かない製品である。
最初はマウスの登場に驚いた。ウィンドウズに感銘を受けた。ブログに
可能性を感じた。サービスはさらに進化しようとしているが、携帯電話が
備えるテンキーの制約がサービスの発展を阻害しているのが現状である。
これから革命がおこるとしたら、インターフェースだ。この分野こそアップル
が最も優れている分野である。
電話を利用するのなら相手の顔が表示されるし、メールを送信するので
あればキーボードが表示され、もちろんiPodの操作画面もある。通話時
には、タッチパネル機能がオフになる。それぞれの操作は指でアイコンに
触れるため、直感的で分かりやすく、情報表示面積を大きくとることが
できる。
全面タッチパネルはテンキーとは比較にならないほどのポテンシアルを
持っている。画面に表示可能のものであれば、どんなキーボードにも
化けられる。ATMを模倣することも出来るし、切符の自動販売機と同じ
画面を表示し、操作することも可能だ。サービスにアクセスする端末として
無限の可能性を秘めている。
(アップルは5日、液晶画面を指でなぞって操作する、「iPod タッチ」を
発表した。)
実行環境はMac OS Xがベースになっているので、デスクトップ級の
アプリケーションを提供することができる。
iPhoneは第2世代のGSM通信方式である。米国は第3世代のW-CDMA
2000になっていると思っていたが、GSM方式も存在しているわけだ。
日本ではNTTがPDC方式で第2世代の世界標準にしようとしたが、
結果的には国内のみで使用される規格になった。
iPhoneは2008年に日本でも発売される見込みだが、このままでは使え
ない。日本の通信方式に合わせた改造が必要になる。またキャリアー
間の調整が必要になる。
注:iPhone対抗機登場
米携帯電話第2位のベライゾン・ワイヤレスは11月末に始まる、米の年末
商戦向けに携帯電話四機種を発売する。
このうち韓国のLG電子が製造する「ボイジャー」はタッチ・スクリーン方式。
ボイジャーは通話やウエブ閲覧、メール、写真撮影などの機能を画面に
触れながら操作する。画素数200万のカメラと8ギガ・バイトの記憶媒体を
内臓するなど、機能面ではほぼ同等。iPhoneはキーボードも画面操作に
したが、ボイジャーは本体の内側に従来のようなキーボードを残した。
価格は未公表だが、1台400ドルのiPhoneより低くなる見通し。米では
ベライゾンが独占販売する。iPhoneは携帯最大手のAT&Tが独占販売。
注:ドコモ 主力機種 海外利用可能に
11月以降に発売する主力機種をすべて、世界で最もっとも普及している
第2世代の通信規格「GSM」に対応させる。GSMと3Gの両方に対応させ
ようとすると、二つのLSIが必要で、端末が厚くなるという問題があったが、
国内の携帯電話機メーカーと半導体メーカーが一つで両方式での通信が
できるLSIを開発した。
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