11月19日横浜で矢口史靖(しのぶ)監督のハッピー・
フライトを見る。
矢口監督は「ウオーターボーイズ」や「スイング・ガールズ」
と同じく、未熟な若者たちが、実践を通して成長を果たす
コメデイという柱が、この映画でも真ん中に据えられて
いる。
航空パニック映画のスタンダードな1本に、1970年の
米映画「大空港」がある。トラブルに見舞われた飛行中
の旅客機をめぐる、様々な立場の人たちの群像劇を描いた
もので、その後のハリウッドではスペクタクルやアクション
の表現に比重が置かれ、このジャンルが発展していった。
これは今までになかったタイプ。一回のフライトが成立
するのに必要な要素すべて・・・普段乗客として乗って
いても見えない、あるいは見ていてもよく判っていない
細部をかゆいところに目がとどくように見せてくれる。
描かれるのはある日の羽田発ホノルル行きチャータ便
全日空NH1980便、B747ー400(エンジンはGEのCF6-80)、
実機を使用。折りしも台風13号接近中。
○パイロット
鈴木(田辺誠一)は機長昇格訓練中のコー・パイ。今日
8月24日のフライトに合格すればOJT終了だ。その日の
教官は温厚な望月機長の筈でラッキーと思っていたら、
ひどい風邪で、代わりの教官は威圧感バリバリの原田
教官(時任三郎)。一気に鈴木の緊張が高まる。
ヘアスタイルが乱れるのが嫌で帽子嫌いの鈴木だが、
機外点検中貨物車から垂れたオイルが顔にかかる。
帽子を被っていたら防げることで、もし目に入っていたら
フライトはできなくなると、原田に厳しく追及される。
以前フライト・シミュレーター訓練を受けた時、判断悪く
クラッシュした場面もでる。
○整備士
B747-400のピトー菅のヒーターにエラーがでているらしい。
若手のドック整備士中村はスタート・バルブを交換しようと
考えていたが、時間が無いかもしれない。ライン整備担当の
小泉は折角きてもらったが、時間がないから作業を断ると。
中村は背後から「いますぐ始めれば間に合う」と声をかける
が「そのままにしておけ」という小泉のサインをカン違いして
中村は作業を始めてしまう。
コックピットで計器のチェックをしていた小泉は中村が作業を
始めていると聞いて慌てる。小泉は「出発に間に合わなけ
ればどうするんだ、7分でやれ、できないなら片付けろ」と
声を荒げた。中村は黙って作業を再開する。思いのほか
苦戦したが、作業は何とか時間内に終った。
中村は工具を道具箱に戻すことを忘れるくせがあった。
整備場ではペン1本無くなっただけでも、見つかるまで帰れ
無い。万一エンジンに入ったら大事故につながるからだ。
丁度その時工場見学の小学生の一行をガイドが案内して
いたが、見学後一人の小学生が工具で遊んでいるのを
発見、取り上げて整備課に届けた。
○グラウンド・スタッフ
整備のせいで出発がおくれても、天気が悪くて欠航しても、
スーツケースが壊れても、文句はすべてグラウンド・スタッフ
にくる。それを処理するのがスタッフの仕事だから。
この仕事について5年目の菜採(田端智子)は辞めようかな
と悩んでいる。体力的に自信もないし、出会いもない。
ゲートがオープンし今日の仕事が始まる。部下の美樹が手を
振っているので行ってみると、1980便ホノルル行きB747-
400のエコノミーがオーバー・セールだという。幸いビジネスと
フアーストに空席があり、席を移ってもらう。紳士的な客を
選んだつもりが、大きすぎる荷物を機内に持ち込もうとして、
CAに止められ大声で騒いでいる。菜採は慌てて登場口に
走る。
なんとか荷物を載せてもらい、飛行機は怖いという新婚カップル
をなだめ、ようやくカウンターにもどると、無線連絡が入って
到着ロビーに駆けつけると、取り違えられたスーツ・ケースを
持った男性客がいた。
彼のスーツケースを間違って持っていった女性客を追い、バス
停まで全力で走りだす。バスは出発し菜採は倒れるが、携帯
拡声器で止まれと叫ぶ。止まったバスからようやく荷物を
取り戻した菜採に感動した青年は勤務時間後コーヒー・ショップ
で会ってくれるよう頼み、名詞を渡す。菜採は出会いを感ずる。
○バード・パトロール
鳥の群れがいるので追っ払えとの指令がきたので、馬場は
銃をとり車に乗り込む。その時メデイアの取材と言って女性二人
が車に乗り込む。馬場はからすは利口で飛行機に近づかない
が、かもめは馬鹿で近づいてしまうなど情報をあげる。
かもめの群れに銃を発射し一羽が落ちると、二人が豹変し、
なんということをするのか、自分たちは愛鳥連盟だと言う。
馬場はこれは空砲であって当っても死なないと説明する。
○オペレーシヨン・コントロール・センター
自社の航空機の安全なフライトをサポートする。乗客や貨物の
重量、着陸空港の気象状態などの情報を収集し、それをもとに
飛行計画を作成して機長と検討し、双方が同意する事で運航が
最終決定される。
離陸後も、燃料の消費状況や飛行状態などを目的地に着くまで
監視する。このため「地上にいるもうひとりのパイロット」とも
呼ばれる。
パソコンで雲の分布を調べる詩織(デイスパッチャー)の横で
オペレーション・デイレクターの高橋(岸部一徳)が素早く展開
する画面を見ている。だが「おじさんには無理」とあっさり退散
してしまった。ここでは、羽田空港だけでなく、世界中で何千便
と飛んでいる、この会社の飛行機を全て管理している。
ひとつでも問題が起きれば途端に忙しくなる。雪で欠航したら、
代わりの飛行機を手配しなければならない。搭乗するパイロット
やCAも探さないといけない。その後の飛行機が、欠航するのか、
遅れるのか、天気を予想する人も必要だ。さらに、故障なら整備
の人も手配しなければならない。
今朝詩織が交信した1980便ホノルル行きから無線で「エアデータ
コンピュターが作動しない、離陸時、鳥がぶつかったかもしれない」
という。問題発生。詩織は高橋を呼ぶ。
○コントロール・タワー
「あれ、当ったよね。バードさん何やってんだ」。コントロール・
タワーで離着陸を監視していた和代が1980便ホノルル行き
B747-400を双眼鏡で追う。和代は高校教諭の夫と小学生の
息子がいる。
管制官はコントロール・タワーと階下のレーダー室に分れて
仕事をしている。
飛行機の離陸の際は、滑走路に誘導、離陸許可をだし、離陸後
はレーダーで監視しながら、飛行ルートや高度などを地上から
指示をおくり、空の交通整理をしている。空港だけでなく、航空機
が通るところはすべて管制の対象。
管制官とのやりとりは同じ空域の情報を共有するため、世界中で
英語を使うと決められている。緊急時には日本語でも可。
スピーカーから乗客へのアナウンスが聞こえてくる。どこかで
パイロットがチャンネルを間違えているらしい。近くの飛行機
怒っているに違いない。
○操縦席
鈴木は左の機長席、原田機長は右のコーパイ席に座っている。
離陸後、原田が鈴木に機長の機内アナウンスをしろと言う。
鈴木は初めての突然なので、通信ボタンを間違え、コントロール
タワー向けのチャンネルで話してしまう。CAからの催促で間違い
を知り、しどろもどろで機内放送をする。乗客は笑っている。
○CA(Cabin Attendant)
タクシーに間違った行き先を教えて、ヤバイ、遅刻だと、新人CA
の悦子(綾瀬はるか)は慌ててブリーフイング(打ち合わせ)の
始まっているデスクに向かう。
見咎めた鬼チーフ・パーサー山崎麗子(寺島しのぶ)から、厳しい
言葉が飛んだ。噂は本当だった。
国内線勤務ではヘマの数々を目撃されないまま、うっかり
国際線にデビュー。前向きでノーテンキ。実家が広島で和菓子屋
を営んでいて、お菓子や料理が大好き。
悦子は今日初めての国際線勤務。出発前の1980便ホノルル行き
のB747-400の機内では殺気だった先輩CAたちが準備を整えて
いる。悦子がおずおずと何をしたらいいかと尋ねると、真理(吹石
一恵)にやるべきことを一気にまくしたてられた。実機を使用して
いる。
1980便が離陸してまもなく、モニターにかもめの群れが映り、機長
からキャビンが焦げ臭くなったら教えてくれと連絡が入った。
「焼肉の匂いがするんですか」と悦子がいうと、真理があきれる。
ポーンとベルト・サインが消え、CAたちが一斉にギャレーに入る。
酔い止め、ワイン、週刊誌、ヘッドフオンの故障・・・次々と来る乗客
の注文に対応しながら、合間を縫って機内食を5分で立ち食い。
華やかに世界を飛び回るCAにあこがれる女の子は多い。でも現実
はその夢のような世界じゃない。
各便のCAの人数は、緊急脱出の際、補佐が出来るように、基本的
にはその航空機のドアの数と同数かプラス・アルファー。
チーフ・パーサーはその機の客室責任者。すべての仕事を統括し、
コックピットとの連絡も行う。資格を得るには一定の経験年数と
専門知識・技量が必要。
誰に対しても毅然とした態度を貫く、チーフ・パーサー山崎麗子。
以前は「姉御」と呼ばれていたが、最近は「アニキ」呼ばわりされて
いることに知り、密かに胸を痛めている。
悦子役の綾瀬はるかはピッタリだと監督は言う。表情については
もっと変な顔をしてとよく言われた。テレビ・ドラマ「あおによし」以来
だがとぼけた個性的な感じが良い。主演映画に「女座頭市」が
あるが見に行かない。
ファースト・クラスの食事のあとにだすケーキが搭載されてないことが、
判明した時、フアースト・クラスだけに設置されている炊飯器で
悦子が昔とった杵柄でケーキつくりに成功し、他のCAにあっと
言わせる。
出発前悦子はロビーで両親から、貴女は食い意地がはってお腹を
壊し易いから、正露丸を持って行きなさいと瓶を渡される。
この瓶はあとで映画の中で、転がる小道具として使われる。
冴えない中年の男が飛行機酔いにかかり、悦子のスカートを掬い
その中に下呂を吐いた。悦子はギャレーの中で、どうして自分は
このような目にあうのかと泣く。
○事故発生
出発前4つあるピトー菅のうち右側2個は整備上使用できないが、
左2個が作動していれば問題ないとして、原田機長は出発の判断
をした。飛行中パーサーから、離陸時鳥がぶつかるのを見た乗客が
いると言う報告をうけ、客室からチェックする。翼前縁に血のしみた
跡を発見したがこれは支障ないと判断した。羽田発2時間半後、
別の乗客が鳥がぶつかったと言っているのを聞き込み、再度チェック
すると、機体左側に設置の2本のピトー菅のうち1本に、鳥の跡が
べったり、貼りついており、ピトー菅の先端が壊れていることを発見
した。
安全上ピトー菅1本で飛行継続することはできないので、原田機長
と鈴木は羽田に引き返すことを決断した。しかし羽田は目下台風
13号が襲来中である。
引き返しの知らせが機内に知らされると、フアースト・クラスに上げ
られた、例の男が「先の話と違う。羽田に帰らずホノルルに行け」と
大声でわめきたてる。麗子は飛んで行き、迫力ある説得で収める。
引き返しの報を受け、各部門は一気に慌しくなる。消防車は滑走路
に向け走り出す。オペレーション・センターでは1階ロビーから、羽田
空港の鳥瞰図を運び上げ、準備する。
勤務明けの菜採たちは、森田マネージャーに捕まり、帰ってくる
乗客のホテル手配食事手配を命じられる。又かと菜採たちはぼやく
が、従わざるを得ない。出会いも潰れたと青年から貰った名刺も
シュッレッダーにかける。
整備課では中村がもしや自分の工具がエンジンに入り、故障した
のではないかと青くなる。自分の工具箱に駆けつけ開けると、工具
が1本ない。整備課総出で床やくず箱をひっくり返して調べまくる。
整備課事務から工具の習得があったと連絡がはいり、名札も中村
とあるという。全員から一斉に歓声が上がった。
オペレーション・センターでは台風の状況を逐一機長に連絡、雲塊
の隙間を知らせる。高橋デイレクターが大活躍、台風のしっぽが
空港を通り過ぎていると判断、旋回して館山からの正規着陸コース
で進入できると、但し横風は強いと機長に報告。
原田、鈴木は飛行機の縦軸を少し左にずらし着陸態勢にはいる。
コントロール・タワーでは同機がうまくILSにのっていると感嘆。
無事着陸したあと原田は鈴木に見事な着陸であったと言った。
一件落着後菜採りは、帰りに、駄目になったと思いながら、コーヒー
ショップで飲んでいたら、なんと例の青年がやって来たではないか。
主題歌はフランク・シナトラが歌う50年前の「Come Fly with Me」、
とてもクールだ。
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