がん幹細胞
がんの検診、治療、抗がん剤、放射線治療等に関心はあるが、
がんの幹細胞に特別に注目している。新聞の囲み記事を見つけた。
体をこすった時に出るあかは、皮膚表面の古い細胞が剥げ落ちた
ものだ。その下には新しい細胞が再生されるので、皮膚が薄くなる
わけではない。体内でも、腸の内側にあるひだの先端部からは、古い
細胞がとれ、便として排出される。付け根付近では、細胞が再生
される。
しかし時に細胞は「暴走」し、がんになる。再生の仕組みやその
制御系には謎も多い。
再生に欠かせないのが様々な細胞や組織のもとになる「幹細胞」だ。
皮膚、骨髄、血液、神経などの細胞の種類ごとに存在する。
それだけでなく、どんな細胞や組織にも成長できる「万能細胞」も
みつかっている。
ヒトの場合、受精卵が分割を繰り返して「胚」に成長したあと、様々な
組織に「分化」する。胚からは胚性幹細胞(ES細胞)と呼ばれる万能
細胞を取り出せる。
京都大学の山中伸弥教授らは皮膚細胞に3,4種の遺伝子を入れて
ES細胞と同じ性質を持つ新型万能細胞(iPS細胞)を作った。
幹細胞からできた様々な細胞は細胞分裂によって増えるが、一定の
ところで分裂は止まり死を迎える。
これに対し、幹細胞自身は無限に自己複製する能力を持つ。細胞が
再生するカギは幹細胞が握っているともいえる。
幹細胞も年齢とともに自己複製や分化の能力が少しずつ衰える
との説もあるが、詳しいことは判っていない。
幹細胞が無限に自己複製する性質は「がん細胞と極めて近い」と
指摘する研究者もいる。
「実はいくつかのがんでも幹細胞が見つかり、最近注目されている」
(東京大学宮園浩平教授)。
正常な細胞が、がん細胞に変わるのは「分化の初期段階のようだ」
と宮園教授はみる。遺伝子の異常などが原因とされるが、直接の
きっかけは不明だ・
抗がん剤でがん細胞を攻撃しても、再生を担うがん幹細胞が元気で
ある限り、効果は限られる。しかも「がん幹細胞は分化を終えたがん
細胞に比べ、抗がん剤への耐性も強い」という。
山中教授が分化を終えた皮膚細胞を万能細胞に「戻した」のと同じ
ように、もし、がん幹細胞を正常な幹細胞に戻せれば、治療に
生かせる可能性も出てくる。
もっとも、皮膚細胞に遺伝子を入れ、iPS細胞になるのは、5千個に
1個程度と効率は悪い。入れた遺伝子が悪さをする恐れもある。
細胞の再生プロセスを思い通りに制御して、医療に役立てるには、
まだまだ知識が不足している。(編集委員 安藤 淳)
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